第4回 ディレクター:ざくそん(その2)




こんにちは、ざくそんです。操心術外伝のコラム2回目です。
今回は、催眠ものエロゲーの最も重要な点について語ってみたいと思います。

そもそも催眠もののエロゲーというのは、こんにちではいくらでも見つかるし手に入れることもできますが、
2000年以前はおよそメジャーなジャンルとはいえず、作品数もほとんどありませんでした。

何十本、何百本の作品の内、ごく一部の作品のしかもごく一部のHシーンに、ちょろっと催眠テイストが使用されていた程度。
この時代、まだ少数だった催眠マニアたちは、多くの作品をむさぼるようにプレイし、あのゲームにこういうシーンがあった、
このゲームにそういうHがあったなどと情報交換をしていたものでした。
もちろん中には、いまだに金字塔とも呼ばれる傑作もいくつかありましたが、催眠ファンを特に意識して作られた作品ではなく、
あくまで作品全体のために必要なガジェットとして使われており、催眠自体をウリにしているわけではありませんでした。


ところで話は少々脱線しますが、「催眠もの」という単語。
今では普通にエロゲー業界やエロ漫画業界で使われているけれど、さてその定義とは? と聞かれた場合、どう答えたらいいんでしょうか。
エロゲー業界という狭い業界の中での話ですが、ここ10年の間に催眠という単語の意味するところが、いくぶん変化してきていると個人的には思います。
もともと催眠とは、「催眠術」というリアルで科学的な、厳然と実在するメソッドに対する名称です。
しかし2000年当時、私が同好の士を集めて官能小説の個人サイトを立ち上げたとき、催眠はまだジャンルとしてはまだ確立しておらず、
世間に広めていく上でも分かりやすくカテゴライズする必要がありました。

このとき考えたのが「MC(マインドコントロール)」という言葉です。
「心を操られた女の子が痴態をさらす」
このテーマを表すのに、これ以上適当な言葉はないと考えたからです。
ジャンルを表す言葉として、内外で積極的に使っていた覚えがあります。
そのなかで「催眠」は「MC」を実現するための、あまたある手段の1つとして位置づけていました。
催眠の他に、超能力やら魔法やら超科学やら、心を操る手段なんていくらでもあるからです。
催眠にしたって、本当にリアルな考証の元に施術シーンを描くものから、指パッチンひとつで何でもさせられるもの
(こういうものは特に魔法催眠なんて呼ばれていますが)まで本当にいろいろあります。

「MC」という大きなジャンルの中に、「催眠」という手段を描いた作品がある、という構造ですね。


ともかくも、私の周辺で意識的に「MCもの」というジャンルを広める活動をしていたとき、エロゲー業界でエポックメイキング菜出来事が起こりました。
皆さんもよくご存知、NATORI烏賊さん作「催眠術」の発売です。
この作品のヒットしたおかげで、エロゲー界隈に「催眠もの」というジャンルが認知されたのです。
これは私にとってもMCファンとして大変喜ばしい事件でした。
以降の歴史は皆さんもよくご存知でしょうから省きますが、こうした経緯で「催眠もの」という言葉が人口に膾炙していった結果、
いつしか「心を操られた女の子が痴態をさらす」作品は「催眠もの」と呼ばれるようになっていきました。

厳密には「催眠」を扱っていないにもかかわらず。
でも、言葉ってそんなものだと私は思います。
コアなファンならともかく、MCをよく知らない人にとっては、なんていったって「催眠」は分かりやすい。
魔法だろうが、超科学だろうが、超能力だろうが、「心を操られた女の子が痴態をさらす」作品はみんな「催眠もの」なんです。
これはつまり、「催眠もの」は「ジャンル」を表す言葉になったという事実に他なりません。
私の好きなテーマがジャンルにまで成長したわけで、好事家としては望外の喜びです。
まあ逆に、どんなMCの手段であっても「催眠」と銘打たないと作品を認知してもらいにくくなってしまったことには、いくらかの寂しさは感じますけれど、ね。
それでも「催眠もの」というジャンルの発展を私は願ってやみません。
その「催眠もの」の一端でも担うことができれば。
操心術シリーズはそんな想いを込めて制作してきました。
今回の操心術外伝も、私やおくとぱすさん他、スタッフの催眠愛があふれております。
その成果は、是非皆さんの目で確かめてください。



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