泉水雪絵〜人形つかい



(あの娘か)
 私は渡されていた資料の写真と現物を見比べた。
 友人三人とけたたましくおしゃべりしながら歩いてくる、制服姿の小柄な少女。
 私が学生だった頃には想像もできない髪とスカート丈、見るからに生意気そうな顔つき、品性下劣なしゃべり方。あれチョーヤバい。
なんだよー、おめーバッカじゃねー。あいつウザー。信じらんない。……まったくもって気にくわない。親はどういうしつけをしてるんだ。
 しばらく後をつけ、友人たちと別れたところで近づいていった。
「君、すまないが、道を尋ねたい。ましも台2丁目というのは」
「はあ?」
「だから、2丁目だ」
「知らなーい」
 これでまともにしゃべっているつもりなのだから恐れ入る。目上の人間と話すときはちゃんと敬語を使うように教わっていないのか。
「ふむ……私が探しているのは……」
 今回のキーワードを告げる。
「『ハイツ・モリベ』というマンションなんだがね」
「…………」
 少女の様子が変わった。
 大人を舐めきっていたのが、険が取れ、何かを考えこんで他のものが見えなくなっている時のような、表情の消えた顔になる。
「思い出してくれたようだね。案内しなさい」
「はい…………」
 最初の生意気な態度が嘘のように、従順にうなずき、歩き出した。
 そのマンションはすぐ見つかった。
 エントランスから、エレベーターに乗りこむ。
「どれ……」
 少女のあごに手をかけ、上げさせた。化粧のいらない瑞々しい肌、リップを塗ってつややかに光る唇。
「や…………やめてください……」
 か細い、震える声で言ってくる。だが私の手を振り払おうとはしない。
痴漢にあっても抵抗できない女性のように、おびえて青ざめ、身を固くして耐えるだけ。
 遠慮なく制服の上から胸をまさぐる。細く、硬い。胸は薄く、わずかに盛り上がるのがわかるだけ。
せいぜいがBカップ、へたをするとAかもしれない。
「ふむ。悪くない」
「やめて……いや……」
 目的の階についた。
 鍵を少女に渡し、ドアを自分から開けさせる。逃げ出しもせず、これも従順に従った。
 ドアを閉め、靴を脱ぐ。
 先に入っていた少女は、リビングの中央に立つと、最初の時の生意気さを取り戻したような目つきで私をにらみつけてきた。
「ちょっと! 一体何だよ! こんなところに連れこんで、何する気だ、ヘンタイ!」
 おや。どうなっているのかな。
 ああなるほど、今回はオプションつきだという説明があったな。これのことか。
「どうするもこうするも……お前自身がもう知っているはずなんだがな」
「わかんねーよ! どけよ! 帰るんだから!」
「帰る前にすることがあるだろう?」
 ニヤニヤ笑いが自然と浮かぶ。いいねえ、都合の悪い状況を一気にひっくり返すこの快感。
 パチン。私は指を打ち鳴らす。
 少女がびくっとして、目をしばたたく。見た感じにそれほど変化はないが、先ほどと同じように、眉から険が消えている。
「人の部屋から出たいのなら、君は猫にならねばならない」
「ネコ……」
 ぼそっと、少女は口にする。
「そう、猫だ。人の部屋を出る前には、猫になる。それが常識で、普通のことだ。君はちゃんとそれを知っている。
みんなやっていることだ、君はみんなと同じようにできる。君だけできないなんて、そんなわけはない。帰りたい、だから君は、猫になる……」
 また、パチンと指を鳴らす。
 少女の目が揺れる。心の奥底の変化。めちゃくちゃな私の言葉をそっくりそのまま受け入れ、それに合わせて自分の意識を変容させてゆく。
「次で、完全にその通りになる……当たり前のことを、当たり前にできるようになる……」
 パチン。
「………………」
 少女の顔つきから、何かが抜け落ちた。人が人としてあるためのもの。人間の尊厳。
 肩が下がり、膝が揺れて、膝をつく。
「にゃあ」
「そうだ、お前は猫だ……この家に住んでいる猫だ」
「にゃあ、にゃあ」
 もはやその口からは猫の声しか出てこない。
 頭の中も、この家から出て行くことなんて消え失せている。猫は家につくものだ。家から出ることなど考えもしない。
「お前はご主人様のことが大好きだ」
「にゃーん♪」
 私を見上げて笑うと、さっきまで人間だった少女は、四つんばいのまま、私の足に身をすりつけてきた。
「服が邪魔だろう。取ってやろう」
 丈の短いスカート。腰に手をやりホックを外し、ジッパーを下ろして、ずり下げる。“猫”は嫌がるどころか、嬉しそうにごろごろ喉を鳴らす。
 肉づきの薄い尻を包むパンティは黄色。色気に欠けることおびただしいが、それがいい。色気たっぷりなのは妻だけで十分だ。
 それも脱がせてやると、薄い陰毛と、まだまだ未熟な、縦の割れ目があらわれる。指で開くと、媚肉は実に初々しく、鮮やかな色合い。
残念ながら処女ではないようだ。元のバカさを思えば仕方がないか。
「にゃあ……にゃ……にゃん……ん……」
 仰向けになり大事なところを調べられているうちに、“猫”は鼻にかかった甘い声をあげはじめた。
「そうかそうか、お前はここをいじられるのが好きなんだな」
「にゃーーん」
 うっとりと目尻を垂らし、喉をごろごろ鳴らそうとして、うがいみたいな声を出す。
 指先に熱いぬめりを感じる。
 だが、本格的に楽しむのはまだ先だ。
 しばらく、下半身素っ裸で床を這い回る姿を楽しく見物した。
 飼い主である私の言うとおりに、転がってあそこをさらけ出したり、股間を私の脚にこすりつけたり、
ボールを投げると飛びついたり、何でもやる。私の指を美味しそうに舐めしゃぶり、青い尻をこちらに向けてふりふり揺する。
 私の気分も大分盛り上がってきた。
「それじゃあ、人間に戻ろう。次に指を鳴らすと人間に戻る。
今まで猫だったことはおぼえていないが、俺がお前のご主人様、飼い主であることはそのままだ。お前は俺に逆らえない」
 スナップ音を耳元で、高らかに響かせる。
“猫”の脳髄がまた別な色に塗りつぶされてゆく。
「………………」
 寝ぼけたような声を出して、目をしばたたくと、そこにいるのはもう猫ではない。
「え……あ……?」
 きょとんと首をかしげ、俺を含めた周囲の光景を見回してから、自分の体に目を落とした。
目の前にいる俺よりもまず自分の方が気になるあたりがいかにも今時のガキだ。
「わーーーっ!?」
 上はともかく、下半身がすっぽんぽんということに気がついて、色っぽくもなんともない悲鳴をあげてかがみこむ。
「……座るな。立て」
「なんだよー……ううっ……」
 泣きそうな声を上げながらも、言われた通りに立ち上がった。
「隠すな。手は体の横。気をつけ!」
「は……はい……」
 股間を隠していた手が、震えながら体の脇に動いた。
 上は制服のまま、未成熟な下半身は裸で、直立不動の姿勢。顔は引きつり、今にも泣き出しそうだが、俺の言葉に逆らうことはできないでいる。実にいい。
「服を脱げ。上を、全部だ。素っ裸になってまたその姿勢だ」
「え……やだ……」
 弱々しく拒むのを、目に力をこめて睨みつけてやる。たちまち反抗の意志は押しつぶされてゆき、涙をにじませながら上着のボタンを外しはじめた。
 ブラウスが消え、ブラジャーだけが残る。パンティと同じ色の、おとなしいデザイン。細い腕を背中に回し、ホックを外す。
ストラップが肩からずれて、ずれたカップの下から胸のふくらみがあらわれる。小さな乳首の色はまだまだ鮮やか。
エレベーターでまさぐった時にこの手で測った通り、恐らくBカップの、発展途上の乳房。
 ブラジャーを外し終えると、手はのろのろと、また腰の左右に張りついた。直立不動の姿勢。
 全裸のままのその姿を、私は目を細めて鑑賞する。
「ぐすっ……や…………見ないで……うう……」
 べそをかきながらも、全裸のまま身動きしない。
「動くなよ。そのままでいるんだ」
 私は命令すると、肉づきの薄い裸身に手を這わせた。
 小さな乳房を手の平に収める。揉むと、わずかに痛そうにする。弾力があるというより、まだまだ硬い、青い果実だ。
乳首をいじるとぴくっと震え、切なげに眉を震わせるのは、先ほど猫だったときの余韻だろう。
 少し幼さの残る、ぷっくりした腹をなで下ろし、淡い陰毛の感触を愉しんでから、その下の割れ目に手をあてがう。身を強ばらせる反応が実にいい。
「う…………くうっ…………ひっ……」
 指を動かしても、嫌悪と恐怖に身震いするだけで、大して濡れるわけでもなく、ひたすら耐えるだけ。
「よし……もういいぞ。服を着ろ」
「え……?」
 俺の言葉に、信じられないように目を見張った。
「どうした。いやならずっとそのままでもいいんだぞ」
 慌てて服に飛びつき、下着をつけ始める。
 私は、元通りに制服を整え終わるまでのんびり待ってやった。
 そして、最初の格好に戻った少女に言う。
「よし、では……私のペニスを舐めるんだ」
 裸など今更見慣れている。この格好でやらせるからこそ興奮するというものだ。
「なめ……?」
「わからないか。フェラチオしろと言っているのだ」
「えっ!?」
 驚き、かつ嫌悪に顔を歪めるが、すぐにもっと大きなものがその心をねじ曲げて、体を前に進め、ひざまずく。
 俺のズボンに手をかけるが、そこで手が震え、止まった。
「どうした。さっさとするんだ。やり方を知らないわけじゃないだろう」
「……は…………はい……」
 ズボンの前を開かれ、勃起しきった肉棒が露出する。
 それに嫌そうに手を添え、眉をしかめながら、唇を寄せて、まずは軽くキスをした。
 ちろちろと舌を動かし、音を立ててキスをして、唇でなぞり、また舐める。
次第に動きは大きくなってゆき、喉でひとつうめき声を漏らすと、歯列を開いて、ふくれた亀頭を小振りな口の中に飲みこんだ。
熱い口腔粘膜と舌、からまる唾液。すぐに音を立ててしゃぶり始める。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅぷ……」
 顔を前後させる少女の、その目はあくまでも嫌悪の涙に潤み、ぎこちない手つきにも心はこもっていない。
 そうだ、こう、この表情この反応で、そのくせ私に逆らえないというのが最高なんだ!
 私は少女の口内のペニスをより膨張させ、さらに次の命令を下した……。







「……それで、どうなったの?」
『旦那様は、その子の性感を非常に高めておいてから、意識のみ通常に戻しました。
我に返り、猛烈に抗いつつも、口をこすられるだけですぐに感じてしまい、どうにもならなくなった相手の顔面にまず一度目の射精を……』
「ごめんなさい、詳しい話はいいわ。後で映像を送ってくださいね」
『わかりました、奥様』
「それで結局、終わった後はどうだったの? あの人、満足していたかしら?」
『旦那様は、何度も絶頂したことをすっかり忘れて家に帰る少女に、わざわざもう一度声をかけ、口汚く罵られて、嬉しそうにしておられました』
「そう。それならいいわ。ありがとう。いつもながらいい手際ね。催眠暗示と薬物を利用した洗脳、やっている本人も知らない売春行為。素晴らしいわ」
『おほめにあずかり光栄です』
「次の機会には、あの人にはもっと胸の薄い、男の子みたいに見える子をあてがってやってね。
体だけじゃなく、気性もわたくしと正反対の、一本気で融通のきかない感じがいいわ。
あの人、わたくしには一切逆らうことができないから、外では従順な女、言いなりにさせられるシチュエーションを好むのよね。
できる限りオーダーに応じてやって。わかっているとは思うけど、あの人が自分でその相手を選んだと思わせるように持っていってね」
『承知しております。万事おまかせくださいませ』
「あなたのようにものの分かった方が取り仕切ってくれているから、わたくしも安心して夫をまかせられるのよ。これからもよろしくね」
『はい。私どものこの商売も、雪絵様の後ろ盾があってのこととよく承知しております。ご要望がありましたらぜひともお申し付けくださいますよう』





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